桜空あかねの裏事情
プラティア 第五区 某所
空間都市プラティア。
基本穏やかな時間が流れる異能者にとっては憩いの場所。
しかしどんな世界やどんな場所にも、常に危険は付いてまわるもの。
このプラティアも決して例外ではないのだ。
「はぁ……はぁ……いやぁ………参ったねこりゃ…」
六つの区域に分けられるプラティアの中で、一際危険地帯と知られる場所。第五区。
荒廃した建物が連なるその中心に、一人の男がいた。
冷や汗を掻き、荒い息を吐きながら、自分を見下ろす人影を見上げて呟いた。
肩で息をしているその体には多数の掠り傷と、肩と足、そして脇腹から血が流れて出ている。
「ここ数年…場所を変えては、静かに暮らしてたってのに……ホント嫌になっちゃうよ」
「生き残りは排除せよ。それが命令なのだ」
「そう、だろうね。けど……今や名高いあんたらが、たかだか俺一人にちょいと構い過ぎじゃない?」
自身を見下ろす影は、分かっている範囲で四人。
もしかしたら他にもいるかも知れないと、猜疑心を持ち周囲に気を配りながらも、男は笑みを浮かべて陽気に問い掛ける。
「ハッ!構いすぎだ?んなの当たり前だろ。やっと見つけた念願の獲物を、みすみす見逃すわけねぇんだよ」
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