桜空あかねの裏事情

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「だから定期的に、住処を変えてるらしいんスよ」

『ふむ……やはり狙われている、か。かつて彼が所属していたチームを滅ぼしたのは、当時無名のチーム。現在の――』

「チーム・アヴィド。入り乱れるチームランキングの中で、七年連続不動の二位」

『そんな彼等が、表舞台から姿を消した生き残りを今もなお探しているとなると、ただ事ではないね』

「そうッスね。理由までは流石に知らないッスけど、やっぱ証拠隠滅ってヤツですかね?」

『どうだろう。まぁ自分達の栄光に傷が付くという点では、そうかも知れないけれど……』

「けれど?」

『それだけではないはずだよ。トラディメント・ドメニカは一般的に両チームの抗争と片付けられているけど、実際はアヴィドによる一方的な惨殺。最後の生き残りを消せば、アヴィド側としては確かに都合は良い。しかしその生き残りは、自ら彼等に干渉している事はない』

「あ、確かに」

『これはあくまで推測だけど、生き残りが追っ手をやり過ごしていく内に、或いは別の何かが原因で、アヴィドはその生き残りを脅威と判断し始めたのではないかと』

「なるほど。でなきゃ、たった一人の生き残りをネチネチと付け狙うワケないッスね」

『どうやら生き残りの彼は、面倒な相手に目を付けられてしまったね』


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