桜空あかねの裏事情
「いつかは言うつもりではいる。でも今はまだ……私には覚悟が足りないから」
「……覚悟」
あかねの答えを聞いても、決して批判する事せず朔姫はただ呟く。
「そうね。確かに覚悟は必要ね」
「……」
「私もね……貴女とは少し違うけど、母を疑った事があるの」
「え――」
「さっきも言ったけれど、父は生まれてくる前にもういなくて、母と二人きりの生活だった。生きていくために母は働いてばかりで、私は一人でいる事は多くて……寂しい時もあったけど、それでも私は幸せだったわ」
その時の光景を思い出しているのだろう。
朔姫は瞼を閉じながら話している。
「だけど……私が小学四年の時、異能が発現した」
「……」
「今みたいに異能をコントロール出来るはずもなくて、友達の前で暴走して能力を使ってしまって、周囲に迷惑を掛けたわ」
能力の暴走。
それは後天的異能者で能力が発現して間もない頃や、異能者として教育を受けていない者など多くは未成年によくある事であった。
だが異能者に理解のない、更には忌避する一般人には分かるはずもないのだ。
「けれどそれ以上に、母はすごい苦労したと思う。私の為に仕事を投げ出して、人様に頭下げて……」
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