桜空あかねの裏事情

悲しそうな面持ちで、朔姫は話を続ける。


「そんなことがしばらく続いて数ヶ月。私は異能を使いこなす為に、ここに……オルディネに来たの」

「そんなに前から?」

「ええ。当時は今みたいに、解散危機という状況ではなかったから。母にとっては、きっと頼みの綱だったのだわ」

「あ……そうだよね」

「ここに来た時は、まだジョエルさんと結祈しかいなかった。正直不安だったけれど結祈は優しいし、ジョエルさんは何だかんだ言って面倒を見てくれて。そんな事はすぐに気にならなくなった」

「うん……そうだね」


自分もここに来たときは今よりリーデルの事が重過ぎて、更には朔姫達所属メンバーに歓迎されていたわけでもなくて、この先やっていけるか物凄く不安であった。


「でもその反面、私は母に捨てられたのではないかと思い始めてたの」

「どうして?だってお母さんは」

「ええ。私の事を考えて、ここに預けたの。でもそれは建前で、私といるのが嫌になったのかと」

「…………」

「だから思い切って言ったの。お母さんが私の事嫌いでも、私はお母さんのこと嫌いになれないって。そうしたら、母はすごい驚いて見たこともないくらい必死に、嫌いになんてなるはずないって。不安ならすぐに家に帰ろうって言ってくれたの」


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