桜空あかねの裏事情
瀬々に導かれ、藍猫にやって来たあかね達。
そこで予め用意した対価と引き替えに、望む情報を手に入れることが出来た。
それは予想を裏切るほどの事実であり、その情報をどのように使うかまだ決めてはない。
だがあかねは泰牙との距離が、僅かにだが短くなったような気がしていた。
話が終わり、藍猫の社員として接する瀬々に見送られ、扉を開けた彼女達が再び第三区の景色を目にしたのは、既に陽が傾きつつある頃だった。
「ふぅー。話、長かったな。疲れちまったぜ」
「ごめんね。思ったより、瀬々が色々教えてくれて」
欠伸をする昶に苦笑を浮かべるあかね。
実質、部屋へと案内され情報のやり取りをしたのは彼女だけで、付き添いで来た昶と朔姫は、待合室で待たされていたのだった。
「気にしないでいいわ。昶、あかねが来るまで寝てたから」
「あ、そうなの?」
「ええ。爆睡だったわ」
「ば、爆睡って……寝てたのは、ほんのちょっとで……その…」
反論する昶だが、徐々に気まずそうに声が小さくなっていく。
それが、何だか可笑しくなり、あかねと朔姫は少し笑った。
「んじゃあ、帰ろっか。今日も泰牙さんとお話しするんだ」
「ええ。でもその前に、ヴィオレットに寄らないと」
「ヴィオレットに?」
「さっきアーネストさんから電話があったの。結祈と一緒にヴィオレットにいるから、終わったら来てって」
理由を聞くと、納得すると同時に珍しい組み合わせだと心なしか思う。
何か用事でもあったのだろうか。
「つーことは、今日の晩飯はヴィオレット特製ステーキか!」
「いや、まだ決まったわけじゃ――」
言いかけたところで、不意に腕を掴まれる。
「行くぜ!ヴィオテキがオレを待ってる!」
聞く耳を持たず、走り出す昶に腕を引かれながら、あかねは笑みを浮かべながら静かに溜め息を零した。
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