桜空あかねの裏事情
来た道を辿りながら、路地から路地を歩いて行く。
迷路のような造りに時々迷いもしたが、覚えの良い朔姫がいてくれたお陰で、なんとか正しい道を進む事が出来た。
「あ、オレこの辺分かるぜ!右だろ?」
「左よ」
「うん。ここは左だね」
「ガーン!!」
大袈裟に落ち込む昶を横目で見ながら、歩いて談笑する。
突き当たりの路地を曲がると、先の方に通りが細く見えた。
「あそこって第一区の通りだよね?」
「ええ。路地はこれで最後」
朔姫の言葉を聞くと、あかねは路地を一気に駆け抜ける。
一番乗りで通りに出ると、そこはやはり見慣れた通りで、ここまで戻って来れたと思うとどこかほっとしていた。
「ネェネェ♪」
朔姫達の方へ振り返ろうとしたその時、目の前に見知らぬ少女の姿があった。
橙色の髪に緑の瞳で、興味津々にこちらを見ていた。
地面に付きそうなほどの黒マントに頭には王冠をモチーフとした飾りを施している。
そして白いブラウスに赤のショートパンツで、胸元には紫の大きなリボンと奇抜な格好であった。
一体どのような意図で着ているのか思わず聞いてみたくなるが、いきなり現れた反動であかねは声を出せなかった。
「アレ?ムハンノウダ。ネェ、キコエテルー?」
「え……な、何?」
目の前で手を振って様子を伺う少女に、絞り出すようになんとか声を出す。
「ア、ヨカッタ。アノネー、キキタイコトガアルンダケドー」
少女が話し始めると、急に後ろから腕を引かれる。
あかねは何かと思ったが、既に隣には朔姫の姿があり、腕を引いたのは彼女だと理解する。
ふと見遣れば、朔姫は鋭い眼差しで少女を見据えていた。
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