桜空あかねの裏事情

叫び声が聞こえて一気に通りに出れば、見知らぬ男に肩をしっかりと掴まれているあかねと、二人の男女に囲まれて、地面に伏して倒れている昶の姿があった。


「あんた達、昶に何したの!?」

「なに、殺しちゃいないさ。アンタを引き渡すのに、抵抗したから寝てもらっただけだ」

「坊やにはもう何もしないし、ここに置いていくから安心して?でも、あなたは連れかなきゃいけないの」


昶を見下ろしてた女が、挑発的な笑みを向けて、そう答える。


「嫌だ!絶対行かない!」


体を捻り足をじたばたさせ、抵抗するあかね。


「……喧しいガキだな。おら、とっとと行くぞ」


今まで黙っていた男が、目の前に来て腕を掴まれそのまま持ち上げられ、肩に担がれる。


「っ……」

「これは命令だからな。早くしねーと、こっちが危ない」


そう言って男は、あかねを担いだまま歩き始める。
抵抗しようにも空振りで、意味がない。
このままでは危ない。
そう直感したあかねは、大きく息を吸い込む。


「っ……“離して!”」

「うお!?」


あかねが叫ぶと、男がくりとバランスを崩して力無く倒れ込む。
その隙に、昶の傍まで駆け寄り距離を置く。


「チッ!コイツも倒れてるガキと同じか。おい、ソイツの口を――」

「させないわ」


背後から雹が飛んで、男たちを襲う。


「朔姫!」

「良かった。間に合って」


振り返れば、少し息を切らしながら、安心したように微笑む朔姫の姿があり、二人を庇うように立ちはだかった。


「あら……まだお仲間さんがいたのね」

「あなた達の相手は私」

「んどは、生意気なガキって……っうわ!」


男が頭を掻きながら、面倒くさそうに呟いている途中に、彼の足元から突き出たように氷柱が現れる。


「生意気なガキだなんて……とても不愉快。好き勝手やっているのは、そっちなのに。腹立たしい」


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