桜空あかねの裏事情
核心を突く事に戸惑い口ごもっていると、その様子を見ていた昶は、何かを察したのかバツの悪い表情を浮かべた。
「…もしかして親子は似るってヤツか?気を悪くしたなら、ごめん」
「い、いえ。そういうわけではなく。その……知っていたんですか?」
自分と彼の関係を。とまでは言わず、控えめに尋ねた。
すると昶はそっちか。と呟くと、少し間を置いて再び口を開いた。
「……一応知ったのは、さっきだぜ」
さっき。
それが指すのは、ジョエルと言い合ってた時だろう。
あの内容では自分とジョエルの関係が、誰が聞いても分かってしまうほど明白なものだった。
だが昶は眠っていたはずだ。
という事は。
「起きてたんですか?」
そう問えば、昶は曖昧に笑う。
「んー…半分くらい?何を話してたとかはあんま覚えてねーけど、父親面とか母さんとか聞こえたからなんとなく」
「そうでしたか……」
明らかに自分の失態だと感じた結祈は、肩を僅かに下ろして落胆する。
「いやー…前にジョエルと話した時、子供がいるみたいな事言われたから気になってはいたけどさ。まさか結祈だったとはな。驚いたぜ」
「ええ、よく言われます。私はどうやら母親似みたいなので」
「結祈の母ちゃんは、どんな人なんだ?」
「さぁ…どんな人でしょうか。私は生まれてすぐ、あの人に引き取られたので、母の顔は知らないのです」
水を差すような事実を流れで話してしまい、途端に結祈は申し訳なさそうに眉根を下げる。
「すみません。貴方に言う事ではありませんでした」
「いいや。結祈が嫌じゃないならいいさ。人には人の事情があるし」
「ありがとうございます」
結祈は頭を下げると話し始める。
「別に話したくないわけではないんです。この事に関して、あまり余計な事を思わないように、敢えて触れないようにしています」
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