桜空あかねの裏事情
ヴィオレット 円卓の間
「昶がそんな事を?」
「そうだよー。やっと意識が戻ったと思ったら、いきなりそんな事言うんだもん。驚いて胸がドキッとしちゃったんだけどー」
「それはどうでもいいですが……反対はしましたよね?」
「無論だ。彼女を助けたい気持ちは分からなくもないが、リスクが大きすぎる」
「それなら良かったです」
アロガンテの屋敷への偵察をして行った翌日の正午。
結祈は、ギネヴィアと共に無事帰還した。
自分の帰りを誰よりも待っているであろう昶に、声を掛けようとすると陸人に呼ばれ、不在だった間にあった出来事を話された。
どうやら昨夜、昶はオルディネ所属する全員でアロガンテの屋敷に侵入し、あかねを救出するという案を訴えていたらしい。
謂わば殴り込みというものだろう。
確かに一つの手段であるが、今のオルディネでは分が悪い。
「にしても、また大胆な事を考えるものねぇ。それだけあかねちゃんが大切なのかしら?」
「さぁね。どのみち余計な事じゃん。あの子のために、僕はそこまでする義理ないね」
非常時である時でさえ、陸人の態度は何ら変わりない。
仕方ないと言えばそれまでかも知れないが、もう少し妥協的になる事は出来ないものかと、彼を横目に見て結祈は密かに思う。
例え思ったところで、無駄だったとしても。
「…それでどうだったんだ?アロガンテの屋敷は」
機転を効かせてか、はたまた偶然か。
駿は結祈に問い掛け、場の空気に緩急を付ける。
「以前、潜入した時と同じでした。相変わらず、静かで人が少なくて……所属者の話を聞く限り、あかね様の事を知らないようでした」
「だが、彼女はその屋敷にいる可能性が高いんだろう?何故…」
「アロガンテには地下があるのよね」
答えを迫る駿に、ギネヴィアが遮るように言い放つ。
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