桜空あかねの裏事情
「…そんな者が、よく頂点になれるものだ」
「当時は今以上に実力主義ですし、新チームの性質からして……はい」
苦笑しながらそう説明する結祈も、皆まで言わず言葉を濁す辺り、自身と同じ事を思っているのだと、駿は悟る。
「先々代が現役を引退すると同時に当時、神の手と呼ばれた創作の異能者に、開かずの扉を造らせたと言われてます。恐らく身の危険を感じたのでしょうね」
「なるほど」
開かずの扉が出来た経緯は聞けたものの、やはりその扉をどうやって開くのかは分からない。
「でもさー、その開かずの扉を造ったヤツって、この黎明館も建てたんじゃなかったっけ?」
「ええ、ジョエルの話ではそのようです。ですがその方は既にお亡くなりになっているらしく、詳細を聞く事も適いません」
「だからアタシと結祈で、何か手掛かりを見つけられればと思ったんだけどねぇ……残念ながら収穫ゼロよ」
せめて噂話や地下に何があるのかだけでも、聞ければ良かったんだけどねぇ。とギネヴィアが独りでに呟く。
「扉の外観はどうなってるんだ?」
「外観?そうねぇ……一言で言うなら、あれは壁ね」
「壁?」
「アタシが随分前に忍んだ時に見たんだけど、特定の人物が来ると壁に扉が浮かび上がって開くのよ。有名な映画にもそんなのあったじゃない?だいたいそんな感じ」
「……要は奇妙な仕掛けが施されているわけだな」
やや雑駁とした説明だったが、自分なりに解釈すればギネヴィアは微かに笑って頷いた。
「簡単に言えばね。だから今度は解析が得意なアーネストを連れて調べてみようかと思ったんだけど……アイツは?」
「アーネストなら先程、昶と泰牙といたと思うが」
「結祈ー!」
名を呼ぶ声と共に、思い切り扉が開かれる。
「うるさいよ、後輩ちゃん。ボク喧しいの嫌いなんだけど」
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