桜空あかねの裏事情
現れた昶に、陸人はあからさまに嫌そうな顔をする。
しかし当の昶は気にする素振りもなく、結祈に詰め寄る。
「昶、先程あなたの話を――」
「結祈!これを見てくれ!」
「あ、はい」
「全ッ然、聞いてないし」
陸人が毒を吐く傍ら、結祈に渡されたのは昶の携帯であった。
画面を見れば、メール文が表示されており、送り主は朔姫のようだ。
焦燥感とはまた違った、昶の慌てぶりを不思議に思いながら、内容を読み始める。
「あ、ボクも読むー!」
「アタシも見ようかしら?昶くん、いい?」
「大丈夫っすよ」
興味があったのか陸人とギネヴィアも、結祈に駆け寄りメールの内容を追う。
読み進めて、三人の表情ががらりと変わったのは、それから間もなくの事だった。
「…あら」
「えー、これマジなの?」
「……」
それぞれの反応に、傍観していた駿も気になったのだろう。
読み終わったであろう結祈が、未だ興味津々の陸人に携帯を渡すと、彼も詰め寄り内容を読み始める。
そして結祈は昶の方へと赴き、口を開いた。
「お聞きしたいのですが、朔姫はこの情報をどこから?」
「ん、はっきりとは言えねーけど……多分、瀬々から聞いたんだと思う」
「瀬々……確か藍猫の新人でしたか」
そう呟けば、昶は頷く。
「オレにはどういう事が微妙に分かんねーけど、朔姫はこれを結祈達にも伝えてくれって書いてあって。それにオレ自身も、きっと役に立つ気がして」
誰に言われずとも、朔姫も昶も、あかねを取り戻す事に必死なのだと改めて知る。
二人は考えて探して、そして見つけたのだ。
――少年からもたらされたであろう情報とは言えど、彼は藍猫の一員。
信憑性は高い。
「ええ。これが真実なら有力な情報です。屋敷に潜入するより遥かに、あかねを助けられる確率が上がる」
「ホントか!?」
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