桜空あかねの裏事情


「リーデルになるという事は、私達以外の人の希望も一身に受けることとなる。それはきっと、あかねに大きく重くのしかかるわ。もしそうなってしまった時、彼女がその重圧に押し潰されてしまわないか……不安なの」


チーム・オルディネの頂点として君臨するリーデル。
長い間その座は空のままだが、誰かしらその座に就けば、間違いなく注目を浴びるのは明白だった。


「人とうまく話せない私にも、あかねは笑って話し掛けてくれる。普通に接してくれる。そんな彼女が私は好きだから。変わらないでいて欲しい」


記憶の中の彼女を思い出しながら、朔姫は少しだけ笑みを浮かべる。
そんな朔姫の本心を聞けた昶もまた、どこか嬉しげに笑みを見せた。


「そっか。朔姫はそう思ってたんだな。オレてっきり『私と同い年で異能もろくに使えない子が、リーデルなんてありえない!』とかって、反対してんのかと思った」

「始めはそうだったわ」


ある日突然やってきた少女。
ジョエルによるリーデル宣言。
あの時受けたかつてない衝撃は、簡単に忘れる事はできないだろう。


「でも今は違うわ。私自身迷っているから」

「そっか。まぁまだ時間はあるしな」


笑顔の昶に、朔姫は軽く頷く。


「ありがとう。お陰で整理がついたわ」

「大した事じゃねーって。そろそろ行こうぜ」

「ええ」


二人は再び歩き出す。
門を曲がって、階段を上がり始めると、昶が「あ」っと声を零して振り返った。


「さっきの話だけどさ、もしあかねがそうなりかけたら、オレ達が支えてやればいいと思う」

「支える?」

「ああ。だってオレ達はダチだろ。ダチのピンチはダチが助ける!これ基本じゃね?」


Vサインを出し、格好良く決める昶。
朔姫は目を丸くするが、次第に顔を綻ばせた。


「……そうかも知れないわね」


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