桜空あかねの裏事情
写真の人物に見覚えがあることを思わず言いそうになったものの、写真がまだ手元にあることを思い出して、あかねは気付かれないように咄嗟に繕う。
だがジョエルは何を思ったのか険しい表情を浮かべた。
――あれ……もしかして
――マズいこと言ったかな。
自分に失言があったのかとあかねは途端に焦る。
「あ、えと……――」
「そうだが」
「え?」
唐突に呟かれた言葉に、あかねは唖然とする。
呆けていると、ジョエルは更に険しい表情を浮かべて深い溜め息を吐いた。
「だからそれは、私だと言っている」
「あ、やっぱり……………ええ!?うそ!?」
あかねはジョエルと写真を交互に見比べる。
――見れば見るほど
――よく似てる。
――というかまんまだ。
――写真の時ぐらい
――笑えばいいのに。
「本当にジョエルなんだ」
「オルディネに所属した直後に撮ったものだったからな。お嬢さんと大して変わらない年頃のはずだ」
あかねは再び写真を見る。
自分と同じ年頃のジョエルは、確かに幼さが僅かに残ってはいるものの幾分か落ち着きがあり、大人びていた。
ふとジョエルの隣に写っている少年を見る。
何度見ても消えることのない既視感に、あかねは思い切って尋ねてみることにした。
「隣の人って、ジョエルの友達?」
「ああ。彼は私の親友にして、先々代リーデルだ」
「えっ…」
――この人が……
――先々代のリーデル。
仏頂面のジョエルとは対照的に、太陽のように眩しい笑顔を向けている金髪の少年。
意外な事実に驚きつつも、あかねは何故だかとても気になって仕方なかった。
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