桜空あかねの裏事情


「もちろん。ていうか、やっぱり嵌められてたんだ……でもそれがきっかけだったと思う」


あかねは落ち着き払って、一度目を伏せる。


「私がリーデルを目指す理由。それは……みんなが大好きだから」


俯きながらも、そうしっかりと答える。


「ここに来てから嫌なことも辛いこともあったけど、楽しいことも嬉しいこともあって。何よりオルディネのみんなと過ごす時間が好きなの。でもオルディネが解散したら、離れ離れになっちゃうでしょ。だから私は、リーデルになるの。みんなと……もっと……もっと、一緒にいたいから……」


どんどん語尾が小さくなっていく。
自分で望んで決めたことなのに、否定されてしまうんじゃないかと思うと、途端に自信をなくしてしまう。
それでも最後まで伝えて顔を上げると、ジョエルはやや間の呆けた表情でこちらを見ていた。
あまりの反応のなさに、あかねはどうしていいか分からず、ただ苦笑する。


「ごめんね。子供じみた理由で……がっかりしちゃった?」

「いや…そうじゃない……ただ…あまりに同じだと」

「同じ?それってどういう……うわっ」


聞き返そうとするとジョエルの手が頬から離れ、やや乱暴に頭を撫でられる。


「な、なにす――」

「確かにオルディネのリーデル候補として、あまりに幼稚な動機だな」


抑揚なく紡がれた言葉に、あかねの表情は翳る。
当然のこととは言え、はっきりと告げられてしまえば心が竦むのだ。


「だがそれが君の意志で、強さの源ならば……それでいい」


「え――」


あかねは思わず顔をあげる。


「笑わないの?」

「笑ってほしいのか?」

「やだ。むかつく」


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