桜空あかねの裏事情
「……随分と大きく出たんですね」
一部始終聞き、あかねは率直な感想を述べた。
ジョエルに対してそこまで言えるのは、世界中探してもアーネストをおいていないだろう。
「私自身が望んだことだからね」
「でもアーネストさんがそう言ってくれたから、私はリーデルに――」
「それは違うよ。オルディネのリーデルの座は紛れもなく、あかね嬢自身が勝ち取ったものだ。君のそのひたむきな姿が、私の心を揺さぶり動かしたんだ」
真剣な眼差しと共に、アーネストは真摯に告げる。
「胸を張って誇るといい。今の君は誰が何と言おうが、自慢のリーデルだ」
「っ……ありがとうございます」
その言葉に思わず泣きそうになるも、同時に嬉しさが込み上げてきて、あかねは柔らかに微笑んだ。
「おや……どうやら準備が出来たみたいだね」
アーネストの視線を辿るように振り返れば、そこにはジョエルがいた。
手には何やら薄い箱のようなものを持っており、二人の視線に気付くと真っ直ぐこちらに向かってきた。
「強情で生意気だった小娘が、まさかここまでとはな。正直、驚いているよ」
「とか言って、本当は予想通りだったんじゃない?」
試すような物言いで問い掛けたが、ジョエルは意外な事に首を横に振った。
「君に期待していた事は事実だが、たかが二ヶ月で無所属の異能者達を集めるなど、無知で非力な小娘では到底成し得ない難題だった。だが君は見事に成し遂げた。生憎なことに、予想以上の結果だ」
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