桜空あかねの裏事情
「ジョエル…」
「やはり私の目に狂いは無かった。おめでとう。これで君は正真正銘チーム・オルディネのリーデルとなった。私は本来の立場に戻り、これからも君を支えよう」
ジョエルは手に持っていた箱を、あかねの前に差し出す。
「リーデル就任の祝いとして、私達からの贈り物だ」
差し出された箱を受け取り中身を見てみると、星型や卵型、球など様々な形をした石であった。
数えてみると十個あり、白や赤、藍色など色鮮やかに輝いていた。
「これって…」
「異能石だよ。オルディネではリーデル就任時、所属者はリーデルに異能石を渡すのが伝統なんだ」
告げられた事実に、あかねは石を手に取ってまじまじと見つめる。
「みんなの…異能石……」
「どれも綺麗でしょ。ぶっちゃけ準備より、こっちの方が掛かったよね?」
「ええ。特に昶くんがねぇ……」
「最初の石は鳥のフンかと思ったよ」
「ちょ、泰牙さん!フンは酷いっすよフンは!」
照れながら慌てる昶の姿に、あかねは微笑むと再び石に視線を戻した。
「昶の石は……これかな?」
手に取ったのは、黄色を帯びた琥珀のような石。
他の石に比べ形は少し歪んでいるが、眩しく温かさを感じるそれは、どことなく昶を思わせる。
「お、おう!一応それな!自分の異能を石になんてしたことねーから、うまくいかなくて形は変だけど…」
「それでも嬉しい。ありがとう。大事にする」
「当然だよ。ボク達の一部をキミにあげるんだから。それが何を意味するのかも、ちゃんと理解してよね」
「はい」
陸人の小言のような言葉でさえも、あかねは頷きながら微笑み、異能石を愛おしそうに見つめる。
「本当に……本当に、私がリーデルなんだ」
ようやく実感が湧いてきて、あかねは確かめるように呟いた。
「そう。これからはあなたがオルディネの頂点。私達の希望。その重さに悩み苦しむ時は、私が支える。友達としても仲間としても」
「オレもオレも!ダチが困ってる時はダチが助けるからな!これからも一緒に頑張ろうぜ!」
「うん!…ありがとう!」
二人の言葉にあかねは感極まって再び泣きそうになる。
それを必死に堪えると、この場にいる全員が見えるように向き直った。
「私を選んでくれて、ありがとうございます。本当に、本当に嬉しいです。私は……まだまだ未熟で頼りなくて、迷惑を掛けちゃうこともいっぱいあるけど、それでも必ず……必ずみんなに相応しいリーデルになります!改めて、よろしくお願いします!」
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