桜空あかねの裏事情
「それだけ挙げられると迷うよね。どこもいいとこだし」
「だが早く決めなければ、宿泊の予約が取れなくなるのだよ」
「だよね……はぁ」
葉風の言葉にあかねは力なく同意する。
「桜空さんは行きたいとこないの?」
「特に思い浮かぶとこはないけど………あ、でも今年の夏は家族旅行で大阪と、あとしろちゃん達と箱根に行くから、出来たらその二つ以外がいいかな」
旅行や祭り、友達と遊ぶ約束はもちろんだが、その他にもリーデルとしてやらなければならない仕事など、今年の夏は例年と比べ物にならないくらい予定が入っている。
「なら候補は福岡、北海道、京都、奈良に絞れるな。俺のオススメは北海道だな」
「おい葉風!抜けてる!沖縄が抜けてるよ!」
「沖縄は今年の修学旅行で行くだろう。今年中に二回も行く必要がない」
「あ、確かに」
「なら沖縄は除外ね」
「ガーン!!」
朔姫は予め持っていた候補地を書いた紙を広げ大阪、箱根、沖縄の順に太く黒い一本線を引く。
「とりあえず福岡、北海道、京都の中から決めればいいと思う」
「でもいいのかな。勝手に絞っちゃって」
「旅行先の選択を委ねた時点で、あなたに決定権がある。問題ないわ」
「ならいいんだけど……」
「決めにくいなら多数決とかもいいんじゃないかな」
「あ、多数決!うん、それがいい。それにしよう」
♪~♪~
打開策が見つかったと同時に、携帯が鳴る。
ポケットから取り出し画面を見ると、知らない番号が表示されていた。
非通知ではないにしろ、見知らぬ番号からの電話に出るのは躊躇われる。
「どうした?」
「まさか彼氏か!」
「違うよ。知らない番号からなんだよね」
「とりあえず出てみたら?知り合いかも知れないし」
信乃の言葉にあかねは立ち上がって、画面をスライドして耳に当てながら、理科室の端へ移動する。
「……もしもし?」
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