桜空あかねの裏事情
「それよりさー、夏休みどうするよ。旅行とバイト以外にも予定入れてー」
「夏期講習があるわ」
「うげぇ」
「確か自由参加だったよね。みんなはどうするの?」
「私はサボる」
「オレも!勉強するなら遊ぶぜ!」
「そうそう。でも昶はダメそう」
「え」
あかねの何気ない言葉に、昶は唖然とする。
その様子を見て、信乃は思わず苦笑した。
「そうだね。参加自由と言っても、赤点補習者は強制参加だから。中間アウトだった香住くんはちょっと危ないかも」
ここでようやく意味を理解した昶は、まさに絶望と言わんばかりの表情で、隣に座っていた葉風に詰め寄った。
「葉風助けて。詰んだ。オレもう詰んだ」
「断る。生憎、瀬々で手一杯だからな。信乃と山川に頼めばいいだろう」
「無理ッ!!コイツらスパルタ過ぎて鬼級だから!ホントに!」
「知らん。自業自得だろう」
「ジョエルさん達から笑われないようにしっかり教えるわ。だから覚悟して」
「ギャー!!」
彼らの一連のやり取りを微笑ましく眺めて、あかねはふと窓の外の景色を見る。
雲一つない眩しい青空と揺れる木漏れ日。
開けていた窓から心地良い風が入って来る。
この二ヶ月間にあった全ての出来事は、きっと忘れることのない大切な思い出となるだろう。
そしてこの先も。
すぐ近くまで訪れている夏の気配を感じながら、これから訪れるであろう日々を、あかねは待ち遠しく思うのだった。
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