【短】時を超えても愛してる 上
「即答かよ・・・・」

土方さんが呆れたようにつぶやく。

「だって知らないんだもん・・・・」

「んじゃあとりあえずこの子屯所に連れて行きます?」

沖田さんが楽しそうに言う。

「総司、お前こいつはもしかしたら長州の間者しれねえんだぞ?」

間者・・・?

私はきょとんとしてしまう。

「副長。この櫻と申すもの、見る限りなぜ自分がここにいるのかすらわかっていない様子。到底演技には見えません。」

「・・・確かにな。でも男所帯にこいつを連れて行くのか?」

土方さんは少し怪訝に言う。

・・・・私ってもしかして邪魔者?

「だからってこんなところに置いていくんですか?」

沖田さんが土方さんに尋ねる。

「しかしだな・・・誰かもわからない奴だぞ?」

土方さんの言葉がいちいち胸に刺さる。

「別に、ここに置いて行っていいです。」

私はつぶやく。

すると言い合っていた三人がこちらを見る。

「だって櫻ちゃん、どうしてここにいるかわかんないんでしょ?」

「わかりません・・・だけど、置いてっていいです。」

邪魔者にされるくらいならいっそ置いてってくれたほうがいい。

家でも邪魔にされて、ここにも邪魔にされるなんて嫌・・・

私は何処に行っても邪魔者なんですか?

そんなことを考えていると斉藤さんが口を開く。

「ここには賊も浪士も出るのだぞ?」

斎藤さんが諭すように言う。

うっ・・・・そ、それは・・・・

でも、私はなんとか虚勢を張る。

「で、でも大丈夫ですっ!!」

「ほーら。土方さんがつべこべ言うから。」

そう言って沖田さんが土方さんを肘でつつく。
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