さよならのその先に
「嫌い、本当に大嫌い」
吉野が居なくなれば忘れられる。そう思ったこともあった。
強く拒めないのはあたしが弱いからだ。
一緒に居ても離れていても苦しいなんて。
「泣くなよ」
吉野の甘い唇が降ってくる。やめて、やめて。
居なくなるくせに、あたしの心に吉野を刻み付けないで。
「夏帆、好きだ」
さよならの代わりに吉野はそう言って、あたしの部屋を出て行った。
そして
それきり、吉野に会うことは無かった。