さよならのその先に
振り返ると、笑顔の彼が玄関に立っていた。
あたしが持っていた荷物を奪うように受け取ると足早に階段を降りていく。
その後ろ姿が子供みたいで愛おしい。
クスリと笑うと彼が「なに?」と不思議そうにあたしを見詰めた。
「幸せだなと思って」
「何言ってんだよ。これから、もっと幸せになるんだろ?」
日に焼けた顔を赤くしながら、照れたように俯く彼に心が満たされていく。
プロポーズの言葉もそうだった。
『もっと、幸せになろう』
身を焦がすような恋は生涯に一度経験すればいい。
それは彼が教えてくれた。
「夏帆、好きだよ」
その言葉に笑顔で答えて。
【END】