《短編》家出日和
家出日和
照りつける日差しから逃げるようにあたしは、木陰にあるベンチに腰を降ろした。
手に持つお茶のペットボトルが水滴を垂らし、あたしの手から熱を奪う。
反対の手で持っていたボストンバッグを、自分の横に置いて。
セミの鳴き声が、耳にばかりついて不愉快だけど。
目の前を、散歩中のピンク色したフラミンゴが群れをなして歩く。
飼育員が通り、その後ろから追いかけるように子供達が、笑いながら駆け回る。
何とも穏やかな、夏の日の昼下がり。
平和でしかない動物園の中であたしは、そんな光景をただ見つめ続けた。
本日絶好の、家出日和。
両親のお墓参りを済ませ、その足で子供の頃に来た動物園へと足を運んだ。
とりあえず、暑すぎて。
来て早々に、後悔ばかりが募るけど。
家出したことに関しては、後悔なんて微塵もない。
♪~♪~♪
間抜けに鳴り響いたのは、あたしのポケットに入れてある携帯の着メロ。
まぁ、見なくても相手の見当はつくけど。
やれやれと思いながら、仕方なくそれを取り出した。
着信:俊ちゃん
―ピッ
「…何?」
『…置手紙。
読んだんだけど、どーゆー意味?』
“家出しまーす”
それだけ書いて置いてきたけど、やっと今になって気付くとは。
あたしの存在なんて、この人にとって一体何の価値があると言うのだろう。
低く聞いてきた声に、いい加減ため息を吐き出して。
額に滲む汗が、ベタついて気持ち悪い。
手に持つお茶のペットボトルが水滴を垂らし、あたしの手から熱を奪う。
反対の手で持っていたボストンバッグを、自分の横に置いて。
セミの鳴き声が、耳にばかりついて不愉快だけど。
目の前を、散歩中のピンク色したフラミンゴが群れをなして歩く。
飼育員が通り、その後ろから追いかけるように子供達が、笑いながら駆け回る。
何とも穏やかな、夏の日の昼下がり。
平和でしかない動物園の中であたしは、そんな光景をただ見つめ続けた。
本日絶好の、家出日和。
両親のお墓参りを済ませ、その足で子供の頃に来た動物園へと足を運んだ。
とりあえず、暑すぎて。
来て早々に、後悔ばかりが募るけど。
家出したことに関しては、後悔なんて微塵もない。
♪~♪~♪
間抜けに鳴り響いたのは、あたしのポケットに入れてある携帯の着メロ。
まぁ、見なくても相手の見当はつくけど。
やれやれと思いながら、仕方なくそれを取り出した。
着信:俊ちゃん
―ピッ
「…何?」
『…置手紙。
読んだんだけど、どーゆー意味?』
“家出しまーす”
それだけ書いて置いてきたけど、やっと今になって気付くとは。
あたしの存在なんて、この人にとって一体何の価値があると言うのだろう。
低く聞いてきた声に、いい加減ため息を吐き出して。
額に滲む汗が、ベタついて気持ち悪い。