《短編》家出日和
「…やだ…!お願ッ…!」


『…亜里沙…』



あれから何度、俊ちゃんの求めに応じて体を差し出しただろう。


折角竹内と別れたのに、まるで意味がなかった。


何度目かの頃にはもぉ、拒否することもしなくなった。


与えられた痛みに、ただ耐え続けるだけの屈辱的な時間。


次第に快感を覚えさせられ、意識とは別に高みに昇らされた。



『…亜里沙…!』


何度も何度も、俊ちゃんはあたしの名前を呼ぶ。


憎んでるはずなのに、

苦しそうにあたしの名前を呼ぶ俊ちゃんの顔を見る度に、

何故かはわからないが悲しくなって。


この感情が一体何なのか、あたしにはわからなかった。


俊ちゃんがあたしに対して、どんな感情を持っているのかなんてことも、

まるでわかんなくて。


だけど、わかりたいとも思わなかった。



いっそ、俊ちゃんがあたしを嫌ってくれれば、と。


いらない、と。


言ってくれたらあたしは、解放されるんじゃないか、って。


そんな風にさえ思い始めた。


あれほど身を寄せ合って眠っていたベッドで、今はこんなことをしてるなんて。


悲しいね、俊ちゃん。




春の初め、無事に中学を卒業。


これからまた、新しい季節が巡る。


高校生になれば、何かが変わることを願った。


こんな日々が、終わってくれることを願い続けた。


馬鹿なあたしの、小さな小さな願い。


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