《短編》家出日和
『亜里沙。
特別だ、欲しいモノ言え。』



迎えたクリスマス。


突然に俊ちゃんは、そう口にしたのだ。


お金以外に俊ちゃんが、“モノ”を与えてくれるらしい。



「…マンション。
それと、自由と権利。
それ以外、欲しいモノなんかない。」


『ハッ、何だそれ。
リンカーンでも気取ってるつもりかよ。』


“全然笑えねぇ”と俊ちゃんは、あたしの言葉を鼻で笑う。


もちろんあたしは、笑わせるつもりなんかじゃなく、本気に決まってる。


解放してもらえるなら、それ以上は何も望んでないんだ。



「―――ィ!!」


瞬間、強い力で引っ張られあたしは、声にならない声を上げて。



『…逃げようとか考えんな、って。
言わなかったっけ?』


「―――ッ!」


視界一面を支配している、俊ちゃんの歪ませた顔。


本気で怒ってる証拠の顔だ。


相変わらずあたしは、この顔を見ると指の先さえも動かせない。



―ドン!

「―――ッ!」


今度は突き飛ばされて。


打ち付けたのか右肩が、痛みを放つ。



『…あんま俺のこと怒らせるなよ…』


諦めにも似た声でそう呟いた俊ちゃんは、動けないあたしの上に馬乗りになって。


固くひんやりとしたフローリングと、

それと同じくらい冷たい視線があたしを捕える。



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