《短編》家出日和
『俊二、ストップ!!』


「―――ッ!」


瞬間、誰かの声に俊ちゃんの足が止まって。


聞いたこともない男の声にあたしは、恐る恐る顔を向けた。



『お前、突然何やってんだよ?!
てか、この高校生って何?彼女?!』


戸惑うように俊ちゃんの知り合いらしい男は、

疑問ばかりを投げ掛ける。



『大我。
今日、悪いけどナシな。』


『ハァ?!
それじゃ答えになってねぇだろーが!!』


“大我”と呼ばれた男は、眉をしかめて声を上げて。



『…大体、俺はてめぇに付き合うほど暇じゃねぇんだよ。
これから亜里沙にゆっくりと話があるからなぁ。』


『えっ?
じゃあ、この子が“亜里沙”ちゃん?』


あたしのことを知っている風な顔で大我さんは、目を丸くして。


俊ちゃんが何をどんな風に言ってるのかは知らないが、

この手を離してくれる気はなさそうなので、それを聞くどころではなかった。



『何だよ、もぉ!
それならそうと早く言えって!』


イキナリ嬉しそうに大我さんは、ケラケラと笑って俊ちゃんの肩を組んだ。


瞬間、長いため息を吐き出す俊ちゃん。


この人に、こんなオトモダチが居たのかとあたしは、他人事のように首をかしげた。



『家帰るんだろ?
だったら、俺も着いてって良い?』


『…来るなよ…』


『いやいや。
そんな顔で怒って、亜里沙ちゃんが可哀想だろ?』


“だから、着いて行く!”


そう続けた大我さんは、あたしに向かってニカッて笑って。


何だかやりにくい人だが、悪い人ではなさそうだ。


諦めたのか俊ちゃんも、あたしの手を離して足を進めた。



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