《短編》家出日和
朝、普段ならとっくに学校に向かってる時間だってのにあたしは、

服も着替えずのん気にリビングでホットのミルクをすすりながらニュースを見る。


本日、みんなが楽しみにしているらしい修学旅行出発の日。


楽しみじゃないあたしは、はなっから休むことを計画していた。


学校には仮病の連絡を入れてあるし、優雅に朝のひとときを楽しむ。


珍しく、至福の時間だ。



―ガチャッ…

『…眠っ…って、え?』


普段ならあたしが学校に行った後に起きてくる俊ちゃんと、

顔を合わせることはないのだが。



『…何で?
つーか、今日から修学旅行とかじゃなかったっけ?』


さすがの俊ちゃんも、それくらいは覚えていたらしい。


だからって別に、咎めるような口調でもないのは意外だったけど。



「…あたし、話したこともない人と3泊4日も過ごせないし。
行きたくないから休んだの。」


それだけ言い、ホットのミルクを再び口に運んだ。


あくびを噛み殺したような顔で俊ちゃんは、

やれやれとあたしの向かいに腰を降ろして。



『…良いけどさぁ。
行かねぇなら最初から言えよ。
修学旅行ってのは、積み立てとかさせられるんだぞ?』


ふ~んとあたしは、コメンテーターのドアップになったテレビに視線を向ける。


こんな人でも、一応あたしの“保護者”らしいことはしていたのか、と。


他人事のように思ってしまう。



『で?
4日間、また引きこもる気?』


「…考えてない。」


煙草を咥えた俊ちゃんは、あたしの言葉にため息を混じらせた煙を吐き出して。


ホットミルクの湯気と一緒にそれが、天井へと消える。


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