《短編》家出日和
今日の俊ちゃんは、ホントに何か変だ。


あの部屋じゃないから、そう見えるのかな。


こんな俊ちゃんのことが嫌いじゃない自分に、ため息を吐き出して。


調子ばかり狂わされる気がする。





それから二人で、見るからに何もなさそうな街をフラフラとして。


歓楽街らしい場所を歩いてみたけど、足を止めたいと思うほどの店もなかった。



『亜里沙、“7”禁止。』


呆れたのであろう俊ちゃんもそう呟いて。


嫌味にしか聞こえなかったので、言葉は返さなかった。


口を尖らせてそんな俊ちゃんから目線を外すと、

不意にあたしの目に入った店に、自然と足が止まって。


何だか可愛いっぽいジュエリーショップ。


“普通”に憧れるだけのあたしには、縁遠い店だ。


女の子なら、一度は必ず“恋人”と言った類の人から貰えるのだろうけど。


あたしには、そんな日がいつか訪れるのだろうか、と。


諦め半分で俊ちゃんに目線を戻した。



『何?
欲しいって?』


「…いらないよ、俊ちゃんからは。」



今でも十分逃げることを許されないと言うのに、

あんな目に見える鎖で俊ちゃんから縛られた日には、本当に終わってしまう。


それにあたしは、“好きな人”から貰いたいのだ。



『…だったらさっさと歩けよ。』


そう冷たく投げた俊ちゃんは、止めていた足を再び踏み出した。


最後に一度ジュエリーショップを捕らえた視線を、再び俊ちゃんの背中へと戻して。


あたしも同じように、足を進めた。


不意に、俊ちゃんのことを憎むことを忘れていた自分を戒めるように唇を噛み締めて。


こんな場所、来るんじゃなかった、って。


さっきのことがあってから変なのは、あたしも一緒だったのだろう。


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