《短編》家出日和
ミシッとベッドのスプリングが軋んだ瞬間、体が反転した。


目を見開いたあたしに、俊ちゃんがキスを落として。


ゆっくりと唇を離す俊ちゃんと、視線が絡む。


あたしを上から見下ろした俊ちゃんは、フッと伏し目がちに笑って。


瞬間にあたしは、いつものように顔を背けて視線を外した。



『俺のなんだから触らせんなよ。』


「―――ッ!」


瞬間、耳元でささやかれた声に唇を噛み締めて。


俊ちゃんの瞳を睨み付けた。



「勘違いしないで。」


『―――ッ!』


その瞬間、俊ちゃんはあたしを睨み付けて。



『お前こそ、勘違いしてんじゃねぇよ。』


「―――ィ!!」


ひどく冷たい言葉と共に、肩を鷲掴みにされて。


思わず苦痛に顔が歪むあたしに俊ちゃんは、首筋を下から舐め上げた。


ビクッとしたあたしを見て、ハッと笑う声が上から降ってくる。



『…余計なこと言わなきゃ優しくしてやったのに。』


「―――ャ!」


あたしの口内に舌を強引に捻じ込んでそのまま、むさぼるように絡める。


ずらされた下着の隙間を縫って、俊ちゃんの大きな手があたしの内股を撫でて。


瞬間に、卑猥な音が部屋に響く。



『濡れすぎ。』


「―――ッ!」


そう呟いた瞬間、俊ちゃん自身が押し入ってきた。


意識とは別に与えられる快感に、押し殺していても声が漏れて。


< 53 / 76 >

この作品をシェア

pagetop