《短編》家出日和
風邪
人より忙しい3学期は、不公平にしか感じないけど。
勉強してないツケがまわって来ただけだから、仕方ないと言えば仕方ない。
だけど今年も、無事に進級出来ることが決まった。
そして迎えた春休み。
知恵熱なのか、体が熱くて。
頭がフラフラとして、焦点が定まらなくて。
馬鹿でも風邪を引くもんだ、と。
他人事のように思ってしまった。
『亜里沙ちゃん!
この映画、絶対面白いと思わない?』
「…この前も似たようなの観たじゃないですか。
しかも、全然面白くなかったし。」
あたしの言葉に、向かいでパンフレットを広げていた大我さんは、
あからさまに頬を膨らませた。
まるで子供のようにさえ見えるその顔に向かってため息を吐き出しあたしは、
水滴のしたたるアップルティーのストローを指で摘まんで遊ぶ。
「…そんなことより大我さん。
いい加減、彼女作りましょうよ。」
『良いの、良いの。
俺、好きな時に好きなことしてたい人だから♪』
ニィって笑った大我さんに、呆れたように再びため息を吐き出して。
何だかこの人と居ると、余計に頭が痛くなりそうだ。
「…あたし、帰りますね?」
やれやれと重い腰を上げ、眩暈さえ起こしそうになりながら、
カフェをあとにした。
穏やかになった風も、淡く緑に染める街並みも。
今はそんなものを感じる程の余裕もないほど、足を進めることだけで精一杯で。
気を抜けば、倒れそうになってしまうけど。
早く帰って寝たい、と。
思いながら、家路を急ぐ。
勉強してないツケがまわって来ただけだから、仕方ないと言えば仕方ない。
だけど今年も、無事に進級出来ることが決まった。
そして迎えた春休み。
知恵熱なのか、体が熱くて。
頭がフラフラとして、焦点が定まらなくて。
馬鹿でも風邪を引くもんだ、と。
他人事のように思ってしまった。
『亜里沙ちゃん!
この映画、絶対面白いと思わない?』
「…この前も似たようなの観たじゃないですか。
しかも、全然面白くなかったし。」
あたしの言葉に、向かいでパンフレットを広げていた大我さんは、
あからさまに頬を膨らませた。
まるで子供のようにさえ見えるその顔に向かってため息を吐き出しあたしは、
水滴のしたたるアップルティーのストローを指で摘まんで遊ぶ。
「…そんなことより大我さん。
いい加減、彼女作りましょうよ。」
『良いの、良いの。
俺、好きな時に好きなことしてたい人だから♪』
ニィって笑った大我さんに、呆れたように再びため息を吐き出して。
何だかこの人と居ると、余計に頭が痛くなりそうだ。
「…あたし、帰りますね?」
やれやれと重い腰を上げ、眩暈さえ起こしそうになりながら、
カフェをあとにした。
穏やかになった風も、淡く緑に染める街並みも。
今はそんなものを感じる程の余裕もないほど、足を進めることだけで精一杯で。
気を抜けば、倒れそうになってしまうけど。
早く帰って寝たい、と。
思いながら、家路を急ぐ。