《短編》家出日和
『澤田。
俺、ずっと前から澤田のこと好きだったんだ。』


去年同じクラスで、ただの友達だと思っていた人物。


会えば“おっす!”って笑って、良いヤツくらいにしか思わなかった人物。


ある日突然に、そんな人物こと“竹内”に告白された。



いい加減、恋なのかブラコンなのかわからない俊ちゃんへの気持ちを、

綺麗サッパリ捨て去るチャンスなんだと思った。


わりと人気者で、サッカー部の副キャプテンの竹内のことを、

きっとあたしは好きになれると思ったのだ。



『付き合ってください。』


「…うん…」



思い出すだけで恥ずかしい青春ドラマの一ページのような青臭い告白に、

あたしは少し赤くなった頬を隠すようにして俯いた。



馬鹿みたいな竹内。


馬鹿みたいなあたし。


本当にもぉ、遠い遠い昔の話のように感じてしまう。



それから竹内とは、一緒に帰ったり一緒に勉強したり。


俊ちゃんには内緒にしてたけど、それでもそれなりに楽しかった。


手を繋いだり、メールをしたり。


友達からはからかわれたが、その度に二人して赤くなっていた。





『今度の日曜、どこか行こうか?』


竹内からの、初めてのデートのお誘いだ。


その日はちょうど、付き合って1ヶ月の記念日の日。



「うん!」


単純なあたしは、もしかしたらこの時には、

竹内と俊ちゃん、どちらも同じくらいに好きになっていたんだと思う。


家に居ても学校に居ても楽しくて。


そんなあたしに、罰が下る。


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