《短編》家出日和
仕方なくあたしは、ベッドサイドに腰を降ろした。


だけど居心地が悪くて、足をブラブラとさせて暇を持て余す。


すぐに俊ちゃんは、最後の長い一筋の煙を吐きだしながら、煙草を消して。


カチャカチャッとクリックし、パソコンを消した。



「…俊、ちゃん…?」


『ん~?』


伸びをする俊ちゃんの背中に向かって名前を呼んでみたけど、

聞いてるのか聞いてないのかの適当な返事。



『てか、亜里沙。
早く寝るぞ。』


「…そっか、おやすみ。」


何だかよくわからなかったがそう言うと、

“何でだよ”と俊ちゃんは、自らのベッドを指差した。



『一緒に寝るから呼んだんだろ?』



いや、リンゴを持ってくるために呼ばれたはずなんだけど。


ガラステーブルの上に置いたままにしているリンゴを見つめ、

変色しないか心配になった。


てゆーか、つっこみ入れてる場合じゃないのかもしれない。



「…何で…イキナリ…?」


『…何でだと思う?』


結局、いつものように逆に聞かれてしまって。


これじゃまるで、会話にならない。


瞬間、トンと肩を押され、力を抜いていた拍子にベッドに仰向けに倒れて。



『ココで寝とけ。』


そう言って俊ちゃんは、あたしを横目にさっさと布団の中に体を忍ばせた。


何だかよくわからないが、どうやら逆らえそうにない。


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