《短編》家出日和
竹内との約束の一時間前。
時間を気にしながらも、
やっぱりあたしは服装や髪形、メイクが気になってしまう。
おろしたての服を纏い、鏡の前で不安になって。
何度も何度もチェックしてしまう。
『…てか、そんな恰好してどこ行く気?
あんま短いスカート穿いてると、ナンパされるぞ?』
面倒くさそうにコーヒーを口に含み、
広げた新聞越しに聞いてきた俊ちゃんにあたしは、笑顔を向けた。
「大丈夫!
彼氏とデートなんだから!」
きっと、本当に馬鹿みたいに笑ってたと思う。
『亜里沙。』
「え?」
低くあたしの名前を呼んだ俊ちゃんに、不思議に思って顔を向けた。
『…何それ?
お前、男とか居たんだ。』
「―――ッ!」
今までに見たことないような顔した俊ちゃんが、こちらを睨んでいた。
その顔に、得体の知れぬ恐怖さえ抱いて。
ゆっくりと俊ちゃんは新聞を置いて立ち上がる。
一歩、また一歩とこちらに足を進める俊ちゃんに、
無意識にあたしの足は後ずさって。
俊ちゃんが怒っているのであろうことはわかる。
だけど、何に対して怒っているのかがわからない。
何を言えば良いのかもわからない、停止してしまった思考回路。
張り詰める空気が、息遣いさえも許されないのかと思うほどに緊張している。
時間を気にしながらも、
やっぱりあたしは服装や髪形、メイクが気になってしまう。
おろしたての服を纏い、鏡の前で不安になって。
何度も何度もチェックしてしまう。
『…てか、そんな恰好してどこ行く気?
あんま短いスカート穿いてると、ナンパされるぞ?』
面倒くさそうにコーヒーを口に含み、
広げた新聞越しに聞いてきた俊ちゃんにあたしは、笑顔を向けた。
「大丈夫!
彼氏とデートなんだから!」
きっと、本当に馬鹿みたいに笑ってたと思う。
『亜里沙。』
「え?」
低くあたしの名前を呼んだ俊ちゃんに、不思議に思って顔を向けた。
『…何それ?
お前、男とか居たんだ。』
「―――ッ!」
今までに見たことないような顔した俊ちゃんが、こちらを睨んでいた。
その顔に、得体の知れぬ恐怖さえ抱いて。
ゆっくりと俊ちゃんは新聞を置いて立ち上がる。
一歩、また一歩とこちらに足を進める俊ちゃんに、
無意識にあたしの足は後ずさって。
俊ちゃんが怒っているのであろうことはわかる。
だけど、何に対して怒っているのかがわからない。
何を言えば良いのかもわからない、停止してしまった思考回路。
張り詰める空気が、息遣いさえも許されないのかと思うほどに緊張している。