妖怪涼祭
狹姫の目から涙が一筋こぼれる。

「・・・狹姫。」

こんは 狹姫を
申し訳なさそうに見つめた。
「悪い。」


そう言って狹姫を
慰める様に
頭をポンポンと叩く。

「こんが悪いのではない、悪いのは狸じゃ。狹姫、お主と朶茅は幼なじみじゃないぞ?」

「はじめにもムラサキが言ってたけど捏造されてただけだから。」


ムラサキカガミと
サトリは狹姫にそう告げる。
その時 引っ掛かった。
サトリは今ムラサキカガミをムラサキ、と呼ばなかっただろうか。
聞くと皆 妖怪同士は
あだ名で呼ぶそうだ。
今までは狹姫が混乱すると思い言わなかったらしい。
サトリは悟(さと)

ぬり壁は壁(へき)

ムラサキカガミは
紫(むらさき)

狐は狐(こん)。


「じゃ、私もそれで呼んでもいい?」


狹姫は皆に尋ねた。
皆は笑顔で承諾してくれた。


その時

チリーン


鈴がなる。


そして



「さとちゃーーーんッ♪」



女の子の声がする。
「?」


すぐに姿が現れて
悟にとびつく。

「君が何でここにいるの・・・・」

悟は その娘を見て
少し驚いた顔をした。

「悟、友達?」

「うん☆僕の友達ィー♪」

「違うじゃない、さとちゃん婚約者でしょ♪」


「えっ!!」

狹姫は驚いた。
妖怪にも婚約者とかがいること。
それから悟にもいた事。


「あっ、姫様だぁ!初めましてッ私、猫娘!私の事は猫(まお)って呼んでにゃぁ?」

そう言うと
目の前のツインテールの猫は 招き猫のぽーずをとった。



初めて 女の子の妖怪に会った狹姫。
朶茅が消えたのは
少し悲しいけど
仲間が増えた事は喜ばしい事だ。

狐はそんな狹姫の笑顔を見て
温かい笑顔で
狹姫を見つめた。

妖怪と姫の 友達の様な関係。
ゆるくて 愛おしくて
いずれ この瞬間さえ
手放せない大切な物になる。
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