妖怪涼祭
しばらく 狹姫は
その暖かく、愛おしい時間を楽しんでいるた。
すると、狐が口を開いた。

「お姉さん、これ。」

狐は 白い紐のついた鈴を渡す。
狹姫は それを受け取り
微笑んだ。

それを見た猫が
服のポケットをまさぐり
鈴を取り出した。
赤色の紐がついた鈴を。

「姫様!これもっ、あげるっ!」

猫は 笑顔に赤い紐の鈴を渡し
また 狹姫も
ありがとう と笑顔で受けとった。


今 ある鈴は5つ。

悟、壁、紫、狐、猫。
皆大切な仲間。

私が姫なんだからしっかりしなきゃ、と狹姫は思うのだが
はた、と気づく。
姫とは 何をすれば良いのか。


悟が狹姫の心を読み
話し出す。

「そっかぁ。言ってなかったね―♪聞きたい?」

人懐っこい笑みを浮かべる悟。
紫は そんな悟をあきれた顔で見
悟につげる。

「悟、心を勝手に読んでは狹姫のプライバシーはどうなるのじゃ?」

「あぁ、悪い♪」


悟は さほど反省した様子もなく
ヘラヘラしている。

「そうだよ、悟。君の昔からの悪いクセだ。」

「・・・へーぃ。」

狐が釘を刺すと
唇を尖らせながらも
素直に引き下がる悟。

一番 狐が年上的な存在なのかもしれない。
一番落ち着いた空気を放っているもそのためか。

「猫、久しぶり・・・。」

「あらっ、壁じゃないっ!相変わらずねぇ、元気ィ!?」


壁も落ち着いているのだが
これは ぼんやりと
言うべきだろう。
猫は 狹姫も驚くくらいのハイテンションで話している。
元気な子だ。

「僕が説明するよ。お姉さん。」

狐が口を開く。
だが その言葉を遮る者がいた。
猫だ。
「その、お姉さんっていうのやめなさいよッ!なんか嫌じゃない?」

「猫も姫様、と読んでおるがな。」

「・・・!」

猫としては
正論を言ったと自分で思っていたのだろうが

紫に自分の事も注意されてしまい
返す言葉もないみたいだ。

「二人とも、私の事は“狹姫”って呼んでくれると嬉しいな。」

狹姫には二人に笑顔を向け そう告げた。

二人とも笑顔になりそれを受け入れた。
改めて狐が狹姫に向き直り仕切り直す。

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