妖怪涼祭
「あぁ!・・・名前、というかひとくくりだけど、ぬりかべ。」


狹姫は 頭をフル回転させる。
「ぬりかべ?
ぬりかべって あれよね?
でっかい壁・・・」

「うん。」

「・・・・壁?」

「うん。」

長身の灰色男・・・
ぬりかべは 自分を壁と言い主張した。

狹姫は少し考えて、無理矢理 自分の中で納得をして
ハッと思い出す。
授業は もう始まっている。

「いいからどいて、授業が!」

「え、あ。」

どいて と言って
狹姫はダッシュしたが
ぬりかべはマイペースなので
素早い行動はしなかった。
猛スピードで狹姫はぬりかべに突っ込む。
そして “壁”なだけに固いのだ。
この男は。

「ふがっ!!!」

当然 顔面激突でぶつかり 倒れ 狹姫は頭を打ち気絶した。

「あぁーあ。」

ぬりかべはそう言って狹姫をお姫様抱っこして 屋上を後にした。



ーーーーーーー



どうして今 ここにいるのか
狹姫には 分からなかった 。
目を開けると白い天井が広がる。
自分はベッドで寝てたみたいだ。
狹姫が居るのは保健室。
身体をおこして辺りを見渡せば
先生が狹姫に気がつく。
「あら、起きたのね。大丈夫?」

「え?はい・・・。」

狹姫は 何が起こったか分からないため
曖昧な返事をした。

「灰色頭の子があなたを運んでくれたのよ。」

(灰色・・・?あ、ぬりかべか。)

保健室の先生は続ける。

「あの子が投げたボールに当たって気絶しちゃったんですってね。」

「え?あぁ、はい。そうなんですよ!」

狹姫は 適当に話に合わせる。

「本人も申し訳ない、と言っていたわ。」

「そうですか・・・。」

(なんか良くわかんないけどいいヤツじゃない、ありがとう。ぬりかべ。)

狹姫は ぬりかべに感謝の気持ちを心で述べ 軽く笑顔をつくった。

「あ、そうそう。コレ、はい。」

先生は 思い出した様に白衣のポケットの中を探り
一つの鈴を取り出した。
そこには 灰色のヒモがついている。

「え・・・?」

狹姫は その鈴を先生から受け取る。

「お詫び、だって。今時 古風よね。」

先生はクスッと笑って 職員会議があるから、と保健室を出て行った。

狹姫は鈴を見つめる。
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