妖怪涼祭
チリーン

『素敵な音ね。』

チリーン

『いい音がするでしょ?』


小さな男の子と女の子。
その 小さな二人がある公園で遊んでる。
でも 男の子は 自分は人間でない、といつも女の子に言っていた。


『じゃあ、ヒーロー?正義の味方?』

女の子は聞くけれど
男の子は首を横に振る。


『違うよ。僕はーーーーー』





ピピピピーーーー
目覚ましが鳴り響く。
狹姫は大きな欠伸をして目覚ましを止める。
今日は土曜日だ。
学校もなく、ゆっくり過ごせる。
狹姫は 前を見つめ
夢の事を考えた。


あれは 誰の記憶?
それとも ただの夢?
それさえも分からない。
でも 鈴の音がした。
「もしかしたら、また妖怪に会っちゃうかも?」

狹姫は 一人でクスッと笑い鏡を見た。
すると

《察しが良いな。》

声が響く。
狹姫はギョッとした。
なんせ 鏡には自分じゃない人がいる。
紫の頭をした長髪の男の子。
同い年ぐらいだろうか。

「な、なによ?アンタッ!!」

狹姫は 紫頭の男に驚き 後ずさる。
しかし そんな狹姫をみて少年は
目を丸くした。
《そなたは、さっき自分で我の正体を当てたではないか。》

紫頭の少年は軽くため息をつき
狹姫をみつめる。
対する狹姫も少年から目を離さない
いや、離せない。

「・・・妖怪?」

《うむ。ムラサキカガミと申す。ひとつ頼むぞ。》

「え、あぁ私は・・・」

急に自己紹介をされてしまい
狹姫はたじろぐ。
が 自分も自己紹介をしなければならない。
しかし

《狹姫、じゃな?分かっておる。》

ムラサキカガミはそう言うと
今まで見せなかった笑顔を見せた。

《ずっと見ておった故・・・》

狹姫は ムラサキカガミの笑顔を高鳴る胸を隠しながら
みつめた。

(な、何?これってまさか・・・告は・・・)



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