わたしの魔法使い
「うー……頭痛い……」

「そりゃそうでしょ。あれだけ飲めば。」

「……そんなに飲んだ…?」

「かなりね。はい、お水。」

颯太さんの差し出してくれた水を一気飲み。

これだけで少し楽になる。

「…今日……無理……」

「はいはい。ゴン太の散歩ね。僕が行きますよ。」


絞り出すように言った言葉は、颯太さんの耳に届いたみたい。

よかった……


って……よくないよ……

あーあ。ついに散歩まで頼んじゃった。

「ごめんね……よろしく……」


それだけ言うと、また目を閉じた。





目を閉じて思い浮かぶのは、昨日の颯太さんの事。


歩けないってわがまま言ったのは私だけど、おんぶは恥ずかしかった……

颯太さんって華奢に見えるけど、意外と背中が大きかった。


足をブラブラしても揺るがない安定感とか、颯太さんの匂いとか……

すごい安心感があった。


そんなことを思い出すと、胸を摘ままれたみたいにきゅんってなる。


これが“恋”なんだろうな……



里村朱里。24才にして初めて“恋”を知りました。



いやんっ



……じゃなくて!



そういえば、たくさん“バカ”って言っちゃった。

本当は、“好き”って言いたかった。

“ずっと一緒にいて”って言いたかった。


でも、出た言葉は“バカ”だったな……

きっと颯太さんも呆れただろうな……


あー……恥ずかしい……



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