わたしの魔法使い
制服デートと、商店街で見かけた高校生カップルの話で盛り上がりながら家に帰ると、颯太は早速餃子作成に取りかかった。

キッチンからは、颯太の使う包丁の音が聞こえる。


「何か手伝う?」

「んー。今はいいや。」

「じゃあ、手伝いがあるときは呼んでねー」


それだけ言うと、颯太のいるキッチンに背を向けてパソコンの電源を入れた。


「さて……と……」


私はワードを立ち上げると、行きに思い付いたことをどんどん入力していく。


やっと書く気になれた……

それが嬉しくて、キーボードを打つ手が止まらない。

真っ白な画面が、色々な文字で埋め尽くされていく。

どんな話にするのか。

名前は?

タイトルは?


次々に浮かんでは消えていく考えをまとめながら、一文字づつ打ち込んでいく。


自分が産み出すキーボードの音以外、何も聞こえない。



久しぶりの感覚。

書くって……やっぱり楽しい!




「…――朱里?」

「ひゃっ!」

集中しすぎたせいか、颯太が後ろに立っていたことにも気がつかなかった。


「…――書く気に……なったの?」


振り返ると、嬉しそうな顔を見せる颯太がいた。


「あー……うん。」


なんて答えていいかわからないよ!

スッゴク嬉しいの!

書きたいって思えたこと、嬉しいの!

だけど……

それをうまく言葉にできないよー!



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