わたしの魔法使い
彼も何かを抱えてる。

辛い何かを。

それが何かはわからない。
ただ今は、この雨の中から帰らなきゃ。


「魔法使いの弟子さん。聞きたいこと、たくさんあります。でも、その前に濡れた服を乾かしましょう」


ゴン太の前に座る彼の腕を引き上げた。



「――!重い!」


「魔法使いの弟子、雨に濡れすぎてダウンです…。」


何ー!

こんなところで?


細身で軽そうに見えても、やっぱり男の人。

見た目以上に重い。

「大丈夫……ですか?」


彼の顔を覗き込むと、


「真っ青!?」


顔色が悪い。

それだけじゃない。

つかんだ腕も雨に濡れて冷たい。

「どどどどうしよう!」


知らない男の人を家に連れて帰る恐怖と、濡れた人を放ってはおけないという気持ちがグチャグチャになる。

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