わたしの魔法使い
水族館までの道は、平日もあって比較的空いている。

この調子だと、開園時間に…


「この調子だと開園時間には着くね。」

同じタイミングで同じことを考えている。

些細なことだけど、そんなことが嬉しい。



「ふふっ・・」

「…――気持ち悪いよ。」

「いいの♪」


気持ち悪くてもいいもんねー。

だって今、かなりご機嫌だから♪

眼鏡かけた颯太は、魅力が3割増しになるとか、ハンドルを操る腕が意外とキュッとしていて男らしいとか、こんなに可愛い車持ってたとか、今まで知らなかったこと、知っちゃったんだもん!!

些細なことだけど、すっごく嬉しいんだもん!!!



「そうだ!ねえ、颯太。この車どれくらい乗ってるの?」

「ん~。免許取ってすぐからだから…10年になるかな?」

「そんなに乗ってるの?…じゃあ、今までいろんなところに行ったんだ~」

「行ったね~。海とかよく行ったよ~」

「こんな可愛い車なら、彼女喜んだでしょ?」


…あーあ。言っちゃった…

聞くつもりなかったし、聞いちゃったら少し嫉妬しちゃいそうだったのに…

私、バカだな~…



「彼女、乗せたことないよ。」


はい?今、“乗せたことない”って言った?


「彼女がいたのは免許を取るずいぶん前。中学くらいかな?それからは彼女、いなかったよ」

「ウソっ!!」

「こんなことで嘘ついてどうするの。この車は僕専用。男友達も乗せたことないよ。」



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