わたしの魔法使い
そ、それって!


「朱里が初めて……」


ドキューン!


心臓……撃ち抜かれました……


もう!何なの?

そんな王子さまみたいな顔して、“朱里が初めて…”って!

しかも少し赤くなっちゃって!


そんなこと言われたら……


「…――この車ね、僕の秘密基地なんだ。…嫌なことがあったときとか、一人になりたいときとか…そういうとき、これに乗ってあちこち行ってたんだ……」

「……ここが、颯太の秘密基地?」

「そう。いい年して秘密基地って笑うかもしれないけど、僕にとっては大切な場所なんだ……」




笑わないよ。

だって、颯太にとっては大切な“場所”なんでしょ?

だったら笑わない。……笑えない。

だって、誰にでもあるはずだから……




「やっぱり引くよね……ははは……」

「そんなことない!そんなことないよ。」

「朱里……」



シフトレバーから離れた手が、私の手をギュッと掴む。

痛いほどの力が入っていて、それだけで颯太の気持ちがわかる。


「颯太……大切な場所、私に教えてくれてありがと……」

私も颯太の手を握り返す。

よかった……ここが高速で……


もう少し、颯太の手を握っていたいから……



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