わたしの魔法使い
結局、“ずっと颯太の手を握っていたい”という私の願いは叶わず、あっという間に離されちゃった。


「手、繋いでたら危ないでしょ?」

「でも~…」

「後で繋ぎっぱなしになるんだから。」


苦笑してる颯太がムカつく!!

何が“後でつなぎっぱなしになる”だ!

そんなこと言うなら、手なんて繋いでやんないんだから!!



それにしても…私ってこんなに甘えん坊だったかな?

買い物行くときだってそんなに手なんて繋がないし、家にいたら絶対繋がないでしょ?

それなのに、今は手を繋いでいたい。

何だろう?いつもと違うから?

それとも…デートだから??


…恋愛経験のない私には、難しくてわからない…





「おっ!海が見えてきた!!」

颯太の言葉で窓の外を見ると、キラキラ光る海が見えた。

「うわー!きれーい!!」

何でだろう?海を見るとテンションが上がるのって。

もう颯太と手が繋げないことなんてどうでもいい!

どこまでも広くて、海の青と空の青が繋がってて。

 
「もう何でもいい!海だー!!」

「テンション高いね~。」

「高いよ~!久しぶりだもん!!」


最後に海を見たのは、いつだったかな?

もうずいぶん前の事だと思う。

たぶん、お母さんが生きてた頃…

それが最後…


「悲しい顔しない!もうすぐ水族館に着くよ!!」


運転席を振り返ると、相変わらず涼しい顔して運転している颯太が目に入った。


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