わたしの魔法使い
――何で水族館は海の近くにあるの?

中には都会の真ん中にあるところもあるけど、ほとんどが海沿いにあるよね?


お陰で水族館も久しぶり。


「…――お嬢様、着きましたよ」

「何でお嬢様?」

「お姫様の方が良かった?」

「どっちもやだ!」


颯太にお嬢様とか、お姫様とか言われると何だかくすぐったい。

自分は王子さまみたいな顔してるくせに!


「やだ!って言ってるわりには顔が赤いのは何で?」

「――!知りません!」



…こういうのを世間では“バカップル”って言うんだよね。

は~……ヤダヤダ。

自分がバカップルになるとは思わなかったよ。


思わなかったけど……たまにはいいかな?

バカップルも……




「じゃあ、行こうか!」

「うんっ!」

空はどこまでも高くて、海はどこまでも青い。






「気持ちいいー!」


颯太が大きく伸びをする。


気持ち良さそうな顔を見てたら、少し意地悪なこと、言いたくなっちゃった。


「車、やっぱり狭いんじゃない。」

「そりゃあ、狭いよ。狭いけど、慣れれば平気だし、降りたときの解放感がいい!」


眼鏡をかけたままの颯太がゆっくり振り返る。

その顔は、夏の日差しを受けてキラキラと輝いていた。



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