わたしの魔法使い
永遠とも、一瞬とも言える時間。

ただ言えるのは

“夢なら覚めないで……”



でも、ゆっくりと離れていく唇が、現実だと教えてくれる。


好きな人とするキスって、胸が苦しくなるんだ……


「…――ごめん……」

「何で謝るの……?」

「だって朱里……泣いてるから……」


そう言って、私の頬に優しく触れる。


私、泣いてるの……?


颯太に抱き締められて、キスされて嬉しいのに……


何で泣いてるんだろう?

わかんないよ……



「朱里……泣かないで……」

わかってる。

わかってるよ。泣いちゃいけないって。

わかってるけど、どうしたら止まるか、わからないの……


「朱里……」



泣いている私にもう一度、優しいキスが落ちてきた。


「……眼鏡……」

「ん……?」

「色々邪魔になるって……」

「言ったね……」

「こういう時?」


颯太の笑い声が耳を擽る。


「そう。こういう時……」




邪魔になんてならないじゃん……



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