わたしの魔法使い
初キスから1ヶ月。

季節もゆっくり秋に向かって変わっている。

僕たちの関係も、あの日から少し、変わった。


少しだけ。

ほんの少しだけ、甘い関係に……



今も、何かを必死で打ち込む朱里の背中と僕の背中はくっついている。

やっていることはバラバラ。

だけど、前みたいに離れていることはなくなった。


「颯太の読んでるの、何?」

「これ?朱里のやつ。」

「また読んでるの?好きだねー。」

「朱里は何打ち込んでるの?」

「……ナイショ」


相変わらず秘密主義だけど……

覗き込んじゃ……


「後ろから覗き込まない!」

バ、バレてました……


「そういえば、最近サラリーマンズ、いないね」

「そうだね。朱里がここにいるって確証、とれなかったんじゃない?」

「それならそれでいいけど。急にいなくなるから不気味だよね。」


そう。あの水族館に行った日から、サラリーマンズは現れてない。

いたらいたで鬱陶しいけど、急にいなくなると不安になる。

そういえば……


あの日、いきなり標的チェンジしたんだよな。

僕に向かって走ってきて、牽こうとしちゃったんだっけ。

でも何で僕?

朱里のこと、探してたはずなのに……


< 186 / 303 >

この作品をシェア

pagetop