わたしの魔法使い
彼女が車に近づくと、運転手らしき人がドアを開けてまっていた。

その運転手の顔を見て、驚いた。


「サラリーマンズ……」


そこに立っていたのは、私を探しに来ていたと思っていたサラリーマンズだった。

「乗って。」


彼女に促されて乗り込んだ車は、高級車らしく皮張りのシートで、座り心地がよかった。


「本当に颯太のこと、知らないの?」

「はい……」


静かな車内には私と彼女の二人だけ。



息が詰まりそう……



「颯太はね、うちの大事な“商品”なの。」

「商品……?」

「そう。かなりの売れ筋商品。」


人を“商品”って言う人、初めて会った。

それも売れ筋商品だなんて。



頭がクラクラする。


この人は何を言っているの?

颯太はものじゃないのに…


「ふふ……あなた、処女でしょ。」

「へ……?」

「男と女の事、何も知らないお嬢ちゃん。違うかしら?」


さっと頬が紅潮するのがわかる。

キッと睨み付けてみるけど、彼女には受け流されてしまった。

悔しい……


「……私、お嬢ちゃんじゃありません。朱里って名前があります」

「そう。じゃあ、朱里ちゃん。理解できるかしら?女が男を買うってこと。」


“女が男を買う?”

“男が女を買う”じゃなくて……?



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