わたしの魔法使い
相変わらず冷めた目の奏さんからは、6年振りに僕の目の前に現れた真意が読み取れない。

まあ、昔からこういう人だったけど。


「…で?俺に何の用?」

「そう急かさなくてもいいでしょ?久しぶりなんだし、ゆっくり話しましょう。」

「ふざけるな!」

「あら?ふざけてないわよ。――出して。」


奏さんがそう言うと、車はゆっくりと動き出した。



奏さんと最後に会ったのは……6年前か……

あのとき、すべての決着はつけたはずなのに。

またこうして過去に追われてる。


結局……逃げ切れない……


窓の外を、見慣れた風景が流れていく。

たった数ヵ月でも、本当に楽しかった……



「……颯太。戻ってきて。」

「……」

「戻ってきなさい。あなたのいる場所は、私のところよ。あんな小娘のところじゃない。」

「……」


小娘……か……

その小娘に、かなり本気で惚れてたんだよ。

でも、もう戻れない。

こんな形で傷つけるつもりはなかったのに。


「借金はもうないはずだけど?」

「ないわね。すべて返済済みよ。ただね、あなたほどきれいな顔をした子。いないのよ。…どう?もう一度やらない?」


きれいな顔……

僕の価値はそれしかない。



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