わたしの魔法使い
部屋に残されたのは、私とゴン太。それと、颯太からの手紙。

そっと封筒から出してみると、丸みを帯びた颯太の文字が並んでいた。


「颯太が笑ってるみたい……」


たった数ヵ月一緒に過ごしただけ。

それでも、颯太の文字はそのすべてを思い出させる。

雨の中膝を抱えていたこと、ゴン太とプロレスをしていたこと、初めてのデート、初めてのキス……


それと、“奏”と名乗った女の人のこと。


そのすべての答えが、この手紙の中にある。

そうおじいちゃんは言っていた。



私は意を決して、手紙を読み始めた。



『朱里。自分の言葉で話さなければいけないのに、こんな風に君のおじいさんに手紙を託すことになって、ごめんね。

何から話していいか、悩んだんだけど、たぶん朱里が気にしてることから話そうか。

あの日、君が会った“奏”という女性は、僕の母親です。』



「言われてみれば、似てたかも……」


ちゃんと向き合った訳じゃないけど、綺麗な顔、してたもんなー……

そうか。あの人は颯太のお母さんだったんだ。

でも、何で名前で呼んでたんだろう?




その答えは、手紙に書いてあった。




< 216 / 303 >

この作品をシェア

pagetop