わたしの魔法使い
私が颯太を救った?

どういうこと?

あの雨の日に会ったのが、初めてじゃないの?



『初めてあったのは、僕が大学1年の頃。

その頃にはもう、すべての借金なんて返し終わってて、でも惰性で続けてたんだ。

そんな自分が嫌で、でも辞めることもできなくて…

その日も雨が降っていてね、すごく寒かったのを覚えてるよ。


お客と別れた僕は、傘も差さないで、公園のベンチに座っていたんだ。

あの日のように……

もうすべてが嫌になってて、でもどうすることもできなくて。

情けないことに、そのときの僕は雨に打たれたまま、泣いていたんだ。

そんな時、一人の女子高生が通りかかってね。

その女子高生は僕に傘を差し出して、“風邪ひきますよ”って笑ったんだ。

“何で泣いてるかわかりません。でも、泣いてスッキリしたら、顔をあげて、自分の進むべき道を歩いてください”って。

ビックリしたよ。年下の、全く知らない子からそんなこと言われるとは思わなかったからね。

でも彼女、傘を僕に手渡して、“きっと子の傘があなたを守ってくれる。だって私、魔法使いの弟子なの。”って……


その女子高生が、朱里。君なんだ。




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