わたしの魔法使い
「もうすぐです。もうすぐだから頑張って!」

公園からたった5分。それなのに颯太さんはもうフラフラだった。

フラフラで、ヨレヨレ。

それでもなんとか歩いている。そんな状態。

顔色も一段と悪くて、呼吸も荒い。


こんな時、ゴン太が人間だったらって思う。

人間だったら、お風呂沸かしてもらったり、買い物行ったりしてもらいたい。

でもね。ゴン太、ワンちゃんだもんね。頼み事できないよねー。


あー。残念。


何て考えてる場合じゃない!

とにかく颯太さんを連れて帰らなきゃ。


やっとの思いでマンションのエントランスまで来たけど、

「鍵が出せない…」

そう。今の私、完全に両手が塞がっている。

右手にゴン太、左手に颯太さんと傘。


いやー!両手に花じゃん!


…てな場合じゃなくて!

鍵、開けられない…。


あの人から逃げるために、セキュリティのしっかりしたマンションを借りた。

それが今は仇になってる。
オートロックを解除したいけど、手が塞がってる。


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